巻の二 平成24年末からの展開
2012年(平成24年)12月26日の安倍晋三の総理就任兼内閣発足、並びに、特に節目の年となった2013年(平成25年)の展開、とりわけ、アメリカの軍人リチャード・ アーミテージ(資料7)が、武器輸出三原則を廃止せよ、特定秘密保護法を成立させよ、集団的自衛権の行使を容認せよ、などと要望する「アーミテージ・レポート」(2012年8月 "The US-Japan Alliance CSIS Report ")をわが国に突きつけたことを引き金に、及び、安倍内閣がその指図通りに進みはじめたことにより、今、この、さらなる戦争への流れが始まっている。
また、わが国にてこの戦争流れを現実化させている三人が安倍晋三、麻生太郎、谷垣禎一であることも偶然ではない。
この三人に特に共通する観点は、ママっ子として知られていたダグラス・マッカーサー同様、安倍も麻生も谷垣も、ともに、軍国主義者を父に持つ娘を母親にもつことである。そしてそのような母親の強い影響を受けて育った息子に共通する観点は、ママの下、己が上に立つため、いざという時に自身が犠牲を覚悟すること以前に、まず他人に危険に直面してもらう、という精神を持つ身となったことである(資料8、9)。
これゆえ、次の五観点からも分かるように、安倍麻生内閣はアーミテージ要望を実現することに必死になっている。
資料8 母親と一緒のマッカーサー
資料7 アーミテージ
資料9 3人で「ママに見せる素顔」(左から麻生、安倍、谷垣)
アメリカ政府が毎年、日本に対する要望を事細かに記した何十頁から成る「規制改革要望書」を日本政府に送り付けている事実を、2009年7月に我々が公表したことにより、鳩山内閣の下で同要望書が廃止されたかのように見えたが、翌年の菅内閣の下で直ぐに、「日米経済調和対話」という単なる別名で復活させられ、再び送り付けられてくるという甚だしい内政干渉の前例があるように、今回もまた、安倍麻生内閣はアメリカに屈することを選んでしまった。
一、 2013年(平成25年)には、麻生太郎が外務大臣として2007年8月にアメリカ政府と
結んだGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の締結の際に麻生太郎がアメリカに約束した内容
により、安倍麻生内閣は「特定秘密の保護に関する法律」(以下「特定秘密保護法」という)
に、一般国民に厳罰を科す内容、条文中の無数の「など」、特定秘密の対象を国民に示さないこ
とにより恣意的且つ事後的に、排斥したい国民を投獄し得るための文言や内容を盛り込んだばか
りでなく、同年12月6日、国民の著しい反対を押し切って、違憲としか言いようのないその特
定秘密保護法案を強行採決してしまった。
二、 2014年(平成26年)には、そしてなんと皮肉なことに4月1日の閣議決定をもって、安
倍麻生内閣は、この戦争流れに不可欠である武器輸出三原則を撤廃してしまった。しかし、撤廃
にあたって、なるべく国民に気付かれぬようにと悪知恵を働かせた安倍晋三とその背後の者ども
は、まず、その名称を変える際に「武器」という言葉自体を避け、響きの良い「防衛装備」とい
う言葉に変えた。さらに、とりわけ最も強い批判を招くことが予想される観点、すなわち、それ
まで全く不可能であった「武器輸入」を可能にするという狙いをくらますために、「輸出入」等
の言葉ではなく、「移転」の字を当て、新たに「防衛装備移転三原則」と題した。そればかりで
なく、閣議決定したその文章においても輸入の観点を隠匿するために、「融通し合う」という、
なんと、それまで日本語に存在もしなかった動詞までをも考え出し、罪悪感をもって、落ち葉の
下に地雷を隠すように、多くの言葉をもって本来の目的を隠したのであった。
三、 更に、同2014年の7月1日の閣議決定をもって、安倍麻生内閣は、集団的自衛権(結局は
アメリカの指図で戦闘を強いられるものであるため、真の目的を表す「集団的戦闘義務」という
べき。)と言われるものが日本国憲法に反するため容認できないという、1972年以来の政府
見解を覆し、違憲であると憲法学者が口を揃えて強調したにも拘らず、その集団的自衛権(戦闘
義務)の行使を容認してしまった。
四、 その数カ月後の2014年12月10日、すなわち、突然巻き起こった解散の風により衆議院
が解散し、内閣が、憲法の定める「内閣の条件」を満たしていなかったなかで、安倍麻生内閣は
特定秘密保護法を施行してしまった。その12月10日の施行、すなわち、衆議院解散により衆
議院が必然的に憲法の定めるその役割を果たし得なかったなかでの施行が、違憲施行であったこ
とは、当該団体が提起した訴訟(原審東京地裁平成26年(ワ)第33129号 秘密保護法の
非人道性と同法施行の違法性に対する国家賠償請求事件・同上告事件最高裁第27年(オ)第
520号)をとおして揺るがぬ事実となったわけだが、司法は三審をとおして、法を侵してまで
被告安倍麻生内閣を必死に庇い続けた。
五、 2015年(平成27年)、日本の国会議員をはじめとする公務員らが受ける巨額の給料が連
続的な賄賂に他ならないため、その巨額や追加の茶封筒などの受領により、国会議員の誰一人
も、①安倍麻生内閣によるこれらの憲法違反、②「集団的自衛権」という言い方が事実の白塗り
である観点、及び、③安保法制と呼ばれるその二つの法律名(「国際平和共同対処事態に際して
我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」と「我が国及び国際社
会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」)が極めて長いこと
が、その真の内容を特定し難くするための手段であることを、一度も真剣に指摘することも問い
ただすこともなかった。(以下「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊
等に対する協力支援活動等に関する法律」を「国際平和支援法」といい、「我が国及び国際社会
の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」を「平和安全法制整備
法」といい、両法合わせて「戦争法案」或いは「戦争法」(他に「安保法制」、「安保法」と言
われている)という。)。
そして、議席の単なる過半数という非民主主義的手口により、まして、全国民とも言えるほど
の国民による著しい反対を踏みつけて、安倍麻生内閣は、2015年9月19日未明の戦争法案
強行採決により、戦後70年間、びっこ引く日本の民主主義を、背後から絞殺してしまったわけ
である。
ところが、このままでは内閣による数々の憲法違反や矛盾観点があまりにも明白であり、背後からのこの振舞いをいずれ次世代が早々と見抜いてしまうであろうと恐れた自民党内閣は、さらなる狂わせ作戦の実行と証拠隠滅を働くことができるために、憲法改正を掲げて憲法の改悪に突き進むようになった。そしてなんと、既に2012年(平成24年)4月に、すなわち、まだまだ野党であったなかで自民党は乱暴草案を用意してしまった。この乱暴草案を読むと、2009年(平成21年)8月末の総選挙によって国民が、長年のアメリカ追従政治の実績を持つ自民党、とりわけ「プラスからプラス」との選挙前発言で記憶に残る首相麻生太郎率いる自民党に「否」(いな)を示したこと、及び、自民党から民主党へと政権が交代したことに対する反発精神に基づく内容(条文)であることが明らかである。
そして、イラついていた自民党議員らが国民の基本的人権を大幅に削除している観点などから、国民に牙が向けられている草案であるとしか解釈できない。さらに、煙草の煙が漂うなかで草案を作成した自民党が終始、野党であったことが実に違法違憲なことであるため、自民党の改憲草案自体が違法なのである。
そして本年(2016年・平成28年)7月、参議院選挙へと進んだ。参議院選挙に至るまで何度か言及されてきた憲法改正の観点は、主に憲法9条に限った内容であり、選挙前に安倍自身も「この選挙は憲法改正を問う選挙ではない」と発言していた。しかし、武力精神を持つ任意団体「日本会議」の国会議員懇談会の特別顧問となっている安倍晋三と麻生太郎は、日本会議という団体を巧みな手段とし、妙に静かな選挙期間が過ぎ参議院選挙の投開票日となった本年7月10日「FNNみんなの選挙2016」番組をとおして、さらなるデマを働いた。すなわち、同番組において日本会議の会員は、参院選で勝利を収めれば、その勝利は、日本国民が自民党の改憲草案(この時点で一般国民に公表もされていなかった草案)、つまり、憲法9条ばかりでなく憲法そのものをも改めることに賛成を表明したことを意味する、旨の内容を余裕な表情で発した。さらに、この時、同じ日本会議の幹部は、憲法の全面的変更及び日本独自の憲法制定の必要性を強調し、あの明治憲法にまで言及したほどであった。しかし同時に、一般国民が意識していない観点、すなわち、明治政府の法律顧問として明治憲法の制定に著しく関わった、いわば憲法制定の中心的人物であった者たちが、実は日本人ではなく、なんと、ドイツ人(アルバート・モッセ、ヘルマン・ロエスレル)やフランス人(ギュスターヴ・ボアソナード)であったこと、つまり、わが国の幸を求めなかった外国人らの手によって明治憲法が制定されたという史実を意識的に避け、隠した。
安倍晋三と麻生太郎を中心とする内閣により、このわずか3年半をとおして、わが国家において新たな武力、暴力、戦争への流れとなってしまったことを示す固い証拠は揃っている。この戦争流れを裏付ける政府関係者(防衛大臣稲田朋美や武田良太防衛副大臣など)による発言は多くあるが、ここではその代表的な四例を挙げる。
①「靖国神社というのは、不戦の誓いをするところではなく、『祖国に何かあれば後に続きます』と
誓うところでないといけない。」(2006年)(稲田朋美・現防衛大臣)
②「国民が国のために命を懸けて戦うのは当然。さらには国のために命を懸けられる者だけが選挙権
を持つ資格がある」(2008年)(稲田朋美・現防衛大臣)
③「戦争は人間の霊魂進化にとっての最高の宗教的行事」と説いた谷口雅春(生長の家創始者)の教
えを「ずっと自分の生き方の根本においてきた」と発言。(稲田朋美・現防衛大臣)
④「もっている国力というものを発揮できる環境を安倍内閣がつくったわけですから、それを活かし
て、どんどん成長していっていただきたい。」武器輸出三原則撤廃2カ月後の2014年6月
(武田良太・防衛副大臣)