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巻の四  新たな謀反

 

 

 2013年の特定秘密保護法にしても、2015年の戦争法(「平和安全法制整備法」、「国際平和支援法」)にしても、議席の単なる過半数により法案を強行採決し民意を冷淡に踏みにじる自民党をはじめとする政界は、その自民党元幹事長・山崎拓さんが本年8月、記者の問いに実に相応しく答えたとおり、「みんな上ばかり見て、ボスの意向を気にしている。猿山の猿と同じ」(8月22日配信)である。そして、ボスとしての安倍晋三に評価されたい諸議員が一丸となって憲法に根ざした国民の反対を押し切ること、民主主義の根本を踏み潰すこと、芝居をも手段とし己のキャリヤのために国民の信頼を裏切ること、もって、国を腐敗させることは、法に反することであるばかりでなく、倫理そのものにも反する行為である。また、メディアの皆もあのボスの嫌がらせを恐れ、わが国が本年8月より憲法解体に進んでしまっているというこの大危機の現状について黙り込んでしまっていることも、実に赦し難いことである。

 

 既述のとおり、自民党が野党であったなかで二~三十人程度の少数グループの者どもが、イラつきシャドーキャビネットとしてこの草案を話し合い、また、練り上げたりしたこと自体が、主権国の異例事態であり、実に「恥憲法」そのものであり、先例がなく、同時に政治的見解の少ない国民にとっても明白なことである。よって、当時、全世界が注視するなかで制定された現行憲法が、数十人が密かに且つ誠に勝手に己の不満を条文にした草案よりも遥かに高く評価されなければならないことは言うまでもない。

 そもそも、国家の根幹に関わる改憲草案は、当時の与党との協議を前提とし、陛下との意思の疎通をも可能とする枠で起草されるべきであった。これにも拘わらず、この草案の起草以来、これらの根本的観点が問題にされず、いかなる色を帯びた議員によっても指摘されてこなかったことは、まさしく、わが国の政界全体が芝居に関わっていることの表れである。これにより、この不正の流れのなか、謀反は、いかにも忌まわしい爬虫類のように、一歩一歩と、確実に姿を現すようになった。

 

 ここでいう「新たな謀反」とは、単なる過半数や3分の2以上のうなずき「了解議員」を従えていること、及び、広く手段としてしまっている様々なデマをもって、「(前略)天皇は国民の名で、(中略)直ちにこれを公布する。」(憲法第96条)の履行義務を掲げて巧みに陛下に忍び寄り、天皇皇后両陛下をはじめ国民が切に願い求め続けてきた平和と民主主義を明らかに離れ、象徴天皇制をも溶かし、人権をも大幅に削除し、緊急事態宣言の条文によりわが国をいとも簡単に独裁国に一変させることを可能にするなど「愚かで野蛮」としか言いようのない内容を含むこの乱暴草案に、陛下の御印をいただく、という「陛下悪用」のたくらみである。

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